2010年  UTAU (2010/11/10発売)の頃   
Fake Book  大橋トリオ (2010)  rhythm zone 


8. 突然の贈り物 [作詞作曲 大貫妙子 編曲 大橋好規] 8曲目

大橋好規: Vocal, Piano

2010年3月10日発売

8. Totsuzen No Okurimono [Words & Music: Taeko Onuki, Arr: Yoshinori Ohashi] 8th track by Ohashi Trio from the album "Fake Book" on March 10, 2010

 
大橋トリオはシンガー・ソングライター、マルチ奏者、作曲・編曲家、プロデューサーである大橋好規(1978- 兵庫県生まれ、千葉県育ち)の一人ユニット。音楽関係者の父のもとで、幼い頃からいろんな楽器と音楽に親しみ、音楽学校でジャズ・ピアノを学んだことで、音楽のベースをジャズに置いたことが名前の由来のひとつになったという。2006年に映画のサウンドトラック盤、2007年大橋トリオ名義で全ての演奏・ボーカルを自分でこなした初ソロアルバムを出した。本作は彼が4枚目のオリジナル・アルバムを出した後に発表した初めてのカバー集(その後2012年の「Fake Book III」まで3枚出している)。アルバム・ジャケットは当時のトレードマークだったハットを被った自画像。タイトルで、カバーを「偽物」と言い放っているところが憎いね。

洋楽・邦楽、音楽ジャンルにこだわらずに、自由な感性で選曲し、オリジナルとは全く異なる編曲を施すことで新しい世界を創り上げている。ドラムス、パーカッション、ブラス、ストリングス以外の楽器はすべて自分で演奏しているが、本作では全体的にキーボードの比重が高くなっている。

大貫さんの 8.「突然の贈りもの」は最後の曲で、彼のピアノのみによる弾き語りになっている。この曲はピアノ伴奏によるカバーが多く、それぞれの演奏を比較する面白さがあり、ここでも大橋によるシンプルながらも音の粒立ちが美しいプレイが聴きもの。また男性ボーカルによるカバーとして、櫻井和寿(2004 Bank Band)、奥田民生(2013 大貫妙子 トリビュート・アルバム)との比べる楽しさもある。

他の曲について (以下 編曲は大橋好規)
1. Dancing In The Moonlight 英語[作詞作曲 Sherman Kelly] Sherman Kelly 1970。当時パリで活動していたアメリカのグループ、King Harvestのカバー1972 全米13位で有名になった。私的には本アルバムのカバーのほうが好み。
2. traveling 日本語[作詞作曲 宇多田ヒカル] 宇多田ヒカル 2001。CGを駆使したSF調のミュージック・ビデオで人気を博した曲。ここではエレキピアノによるグルーヴ、クールなボーカルが心地良い。
3. 贈る言葉 日本語[作詞 武田鉄矢 作曲 千葉和臣] 海援隊 1979。卒業式の定番となったスリーフィンガーのギター伴奏によるフォーク調の原曲をピアノによる変わったリズムでカバーしている。本作の中でも最も野心的なアレンジ。
4. Human Nature 映画[作詞 John Bettis 作曲 Steve Porcaro] Michael Jackson 1983 全米7位。Totoのキーボード奏者が作った曲にカーペンターズの作詞で有名なジョン・べティスが歌詞を書いたもの。オリジナルのエレクトロ・ポップとは異なるブラジル音楽風のアコースティックなアレンジがかっこいい。
5. I'm Yours 英語[作詞作曲 Jason Muraz] Jason Muraz 2008 全米6位。ギター主体の演奏だった原曲をピアノ伴奏にして、曲の乗りを変えたアレンジがユニーク。
6. Grapefruit Moon 英語[作詞作曲 Tom Waits] Tom Waits 1973。デビュー・アルバム「Closing Time」に入っていた曲で、多くのアーティストがカバーしている。大橋の音楽のコアであるジャズのテイストに溢れたパフォーマンスで、原曲よりも軽快な感じの歌唱。
7. Dreams 英語[作詞 Dolores O'Riordan 作曲 Noel Hogan, Dolores O'Riordan] The Cranberries 1992 全米42位。オリジナルのエレクトロ・ポップのサウンドに対し、ピアノ、ギターとパーカッションによる生楽器によるアレンジ。魅力的なハーモニー・ボーカルはmiccaという女性ボーカリストにより再現されている。
8. 突然の贈りもの


とてもシンプルな「突然の贈りもの」のカバーだけど、曲に対する愛情がしっかり伝わってくる。

[2025年10月作成]


あいにゆくよ SAWA (2010)  Epic (Sony)  



 

1. Samba De Mar (Nakatsuka Takeshi Remix) [作詞作曲 大貫妙子 編曲 中塚武] 5曲目


SAWA: Vocal
中塚武: Remix
またろう (三沢またろう): Percussion
副田製歩: Sax
勝部賢太郎: Trombone
小沢篤士: Trumpet

写真上 初回限定盤(本曲含む) 2010年4月7日発売
写真下 通常盤(本曲含まず)

1. Samba De Mar (Takeshi Nakatsuka Remix) [Words & Music: Takeo Onuki, Arr: Takeshi Nakatsuka] 5th track by SAWA from the album "Aini Yukuyo" (I'm Going To See You) on April 7, 2010 (Initial Issue Only)
 

SAWA5枚目のミニアルバム。曲毎に異なる作曲家・サウンドクリエイターと組み、ファンタスティックな世界を展開している。SAWAによる大貫さんの「Samba Du Mar」のカバーは、2009年発売のコンピレーション・アルバム「Seaside Town」に収められていたが、本アルバムの初回発売分に限り、同曲のリミックスが含まれていた。なお初回限定盤と通常盤とはジャケット写真が微妙に異なっている。

「Seaside Town」ではTrak Boysによるプロダクションだったのに対し、ここでは中塚武が担当していて、同じ録音のSAWAのボーカルを使って、全く異なる演奏を付けている。イントロはビリンバウ(ブラジル音楽のパーカッション)から始まる三沢またろうのパーカッション、曲中ではサックス、トロンポーン、トランペットによるブラスセクションがフィーチャーされ、よりソリッドなリズムが強調された音作りになっている。両者を聴き比べると、サウンドクリエイターの個性が違いがわかって面白い。

私は発売当時はこの手の音楽を聴いていないので、ここで述べている事はあくまで高齢者が現在の視点で聴いたうえでの感想になる。そのうえで感じることは、SAWAのボーカルは正確無比な音程とリズム感、そして平面的な歌い回しによりボーカロイド的な色合いが強いものになっているが、同時に彼女の声そのものに聴いていると生理的快感を覚えるような人間味もあって、それが彼女の最大の魅力になっていると思う。

その他の曲について
1. あいにゆくよ [作詞 SAWA 作曲制作 縄田寿志] 遠距離恋愛を歌った曲。歌詞がすばらしい。プロモ・ビデオあり。
2. Jet Coaster [作詞 SAWA 作曲 久保田真悟 制作 Jazzin' Park] Jazzin' Parkは久保田慎吾と栗原暁のユニット。
3. サイダー [作詞 SAWA 作曲制作 大久保潤也] 昔の恋を消えてゆく泡になぞった歌詞がいいね。
4. Super Looper [作詞 SAWA 作曲制作 Ram Rider] クラブのきらめく世界を歌っている。
5. Samba Du Mar (初回発売盤のみ収録)

SAWAによる2通りの「Samba Du Mar」の聴き比べを楽しめるよ。

[2025年7月作成]


 
Dreamland  yojikとwanda (2010)  MIDI Creative   
 

1. 風の道 [作詞作曲 大貫妙子] 8曲目

yojik: Guitar, Vocal, All Instruments
wanda: Guitar, Vocal, Percussion

2010年10月12日発売

注: 曲毎のパーソネルがないので、担当楽器すべてを表示しています。

1. Kaze No Michi (The Wind Road) [Words & Music: Taeko Onuki] 8th track by yojik & wanda from the album "Dreamland" on October 12, 2010

 
yojikとwandaは大阪出身のwanda(男性)と東京出身のyojik(女性)が2006年に結成したユニット。本作は彼らのファースト・アルバムで、二人だけの在宅録音による制作。ナイロン弦ギターによる柔らかい音と、日本のフォーク臭さのない、欧米のトラディショナルをベースとした音楽性が特徴。多重録音や打ち込みを加えた曲もあるが、厚みのあるサウンドではなく、「間」を重視した音作り。

大貫さんの名曲 1.「風の道」はラジのオリジナル(アルバム「Quatre」1979)や大貫さんのセルフカバー(アルバム「Cliche」 1982)のシンセやストリングスを中心とした重厚なサウンドに対して、ここではミュートしたナイロン弦のギターとヴィブラフォン(またはキーボード)のみによるバックで、wandaも音を伸ばさない歌い方、二人によるバック・コーラスも不協和音ぎりぎりでエキセントリックという、オリジナルの厳かなサウンドとは対極のアレンジ。最初は「変てこだな〜」という印象だったが、何度も聴いていると「なかなか味があるな〜」に変わってきた不思議なカバーだ。そして次の曲アイリッシュ・トラディショナルの「Sally Garden」との取り合わせがとてもいいね。

他の曲では、彼らの代表曲となった「I Love You」(作詞作曲 wanda)1曲目が素晴らしい。ミニー・リパートンの「Loving You」を連想させるサウンドで、ぴりっとした内容の歌詞が心に刺さる。多重録音によるバンド・サウンドをバックに、二人が交替で歌う。なお本曲は次作「Hey! Sa!」2012で、ミュージシャンを招いた真正バンド・サウンドで再録音しているので、聴き比べると面白い。

二人はその後も東京および各地のライブハウスでコンサートを行いながらアルバムを制作、映画業界愛用の弁当屋さん「ポパイ」をテーマとしたドキュメンタリー映画「映画の朝ごはん」2023の音楽に参加するなど、現在も活動を続けている。

奇妙奇天烈なアレンジによる「風の道」。

[2025年8月作成]


  
Dear Friends V 岩崎宏美 (2010)  Imperial    

 

6. 黒のクレール(With 塩谷哲) [作詞作曲 大貫妙子 編曲 塩谷哲] 6曲目

岩崎宏美: Vocal
塩谷哲: Piano

2010年10月20日発売

6. Kuro No Claire With Satoshi Shionoya (Black Claire) [Words & Music: Taeko Onuki, Arr: Satoru Shionoya] 6th track by Hiromi Iwasaki from the album "Dear Friends V" on October 20, 2010

 
2001年の「風の道」に続く、岩崎宏美(1958- 東京都出身)2曲目の大貫さんカバー。「Dear Friends」は岩崎が2003年に出したカバーアルバムが好評でシリーズ化したもの。本アルバムが5作目で「VIII」2019まである。2作目からはインターネットにおけるファンからのリクエストを参考に選曲され、6作目からはさだまさし、阿久悠、筒美京平という作曲家特集という内容。

本アルバム全12曲中、「With Name」というピアノ伴奏者の名前を冠した曲が5曲あり、塩谷哲と大江千里が各2曲、小坂明子が1曲という内容。大貫さんの 6.「黒のクレール」は塩谷哲との演奏。彼は1966年生まれで、1986年から10年間、サルサ・バンドの「オリケスタ・デ・ラ・ルス」でピアノを弾き、その後は岩崎宏美の伴奏・編曲を多くするようになった人だ。研ぎ澄まされた静謐なピアノ演奏をバックに岩崎が粛々と歌う。シャンソンの香りが微かに漂う好演だ。

他の曲について
1. Love Love Love [作詞 吉田美和 作曲 中村正人 編曲 塩谷哲] Dream Come True 1995 原曲はビートルズ風、ここでは塩谷のピアノのみの伴奏。
2. あなた [作詞作曲編曲 小坂明子] 小坂明子 1974 16歳の時のデビュー作品で、世界歌謡祭で最優秀・グランプリを獲得して大ヒットを記録した曲。ここでは本人がオケなどの編曲を手掛け、ピアノも弾いている。
3. 黄昏のビギン [作詞 永六輔 作曲 中村八大 編曲 大江千里] 水原弘 1959 ちあきなおみ1991年のカバーが有名。ピアノ伴奏の大江千里は元シンガーソングライターで、2007年よりジャズピアニストに転向しており、センスあふれるジャズピアノの伴奏をつけている。
4. 恋のフーガ [作詞 なかにし礼 作曲 すぎやまこういち 編曲 中井幸一] ザ・ピーナッツ 1967 声質が同じ妹の良美とのデュエットで、オリジナルのハーモニーを見事に再現。バックはアロージャズオーケストラ。
5. 愛燦燦 [作詞作曲 小椋佳 編曲 渡辺俊幸] 美空ひばり 1986 オリジナルの貫禄に負けない堂々とした歌いっぷりが良い。
6. 黒のクレール
7. はじまりはいつも雨 [作詞作曲 Aska 編曲 坂本昌之] Aska 1992 チャゲ&アスカ時代にアスカのソロで大ヒットを記録。

8. 真夜中のドア〜Stay With Me [作詞 三浦徳子 作曲 林哲司 編曲 Bro. Kone] 松原みき 1979 今やJポップの名曲と評価されている曲を2010年にいち早くカバー。これはスゴイ! 八神純子、花田千草(松千のボーカリスト)を迎えた3人ボーカルとBro. Koneのアレンジ、そしてDa Bubble Gum Brothers Bandの伴奏による鉄壁のカバーで、そのグルーヴはオリジナルを凌駕している。なおこの3人組はThe★Three Soul Pigrees と称して同じバンドをバックにNHKみんなのうたで「ピンクと呪文」(2011年2月〜3月放送)を歌い、「真夜中のドア」をカップリングとしたシングルが2011年2月16日に発売されたが、3月11日に発生した東大日本大震災の影響のため、盛り上がらなかった。

9. L-O-V-E [作詞作曲 Bert Kaempfert, M. Gable 編曲 宮哲之] Nat"King"Cole 1964 アロージャズオーケストラをバックに英語と日本語で歌う。
10.駅 [作詞作曲 竹内まりや 編曲 大江千里] 中森明菜 1986 竹内のセルフカバー1987も有名。大江のピアノによるジャズコンボのバックに切々と歌っていて素晴らしい出来。
11. 花 [作詞 御徒街凧 作曲 森山直太朗 編曲 坂本昌之] 中孝介 2007 森山によるセルフカバー2008もあり。
12. 虹〜Singer〜 [作詞作曲 さだまさし 編曲 服部隆之] 雪村いづみ 1994 歌い手の業を描いた壮大なスケールの曲で、ここでもオリジナルに引けを取らない歌唱を見せている。

類まれな歌唱力と聴く人の心を癒すアルト・ヴォイスで、古今の名曲を自分のものにし切って歌う様は、52歳という成熟した歌い手が到達した境地を見せてくれる。

[2025年7月作成]


 
Melting Sun & Ice Moon 原田知世 (2010)  EMI Music Japan 
 

1. 夢のゆりかご [作詞作曲 大貫妙子 編曲 伊藤ゴロー] 7曲目
2. 地下鉄のザジ [作詞作曲 大貫妙子 編曲 伊藤ゴロー] 9曲目


原田知世: Vocal
[Young Masters]
伊藤ゴロー: Acoustic Guitar, Electric Guitar, Chorus
梅林太郎: Keyboards
ミト: Electric Bass, Acoustic Bass, Chorus
千住宗臣: Drums
伊藤彩: Violin, Chorus

エドツワキ: Stage Director
中野裕之: Director
首藤康之: Choreography

収録: 「Tomoyo Harada Live Tour 2010 "eyja"」 2010年4月20日 目黒パーシモン・ホール 
 
2009年10月にアルバム「Eyja」を出した原田知世が、アルバム・プロモーションのために行ったコンサート・ツアーの映像。ツアー最終日の目黒パーシモン・ホール(1991年都立大学が八王子市に移転した後、跡地に建てられたホールで、地区名の「柿の木坂」が名前の由来)で収録された。

スクリーンに映し出された彼女とバンドのシルエットから始まるなど、当時夫だったエドツワキ(2013年離婚)と振り付け担当の首藤康之による演出が入ったステージで、原田は動きが少ないながらも、曲によりポーズをきめる。新アルバム「Eyja」からの曲と以前の作品を混ぜた内容で、原田は2曲でアコースティック・ギターを弾いている。バンドは伊藤ゴローのバンマスのもと、本ツアーが初顔合わせという千住(ドラムス)とクラムボンのミト(ベース)、アルバムに参加していたキーボードの梅林、そしてバイオリンの伊藤彩は以前から伊藤ゴローと一緒にやっていた音楽仲間。映像はコンサートの曲順通りに進んでゆくが、たまに曲間で、中野監督による夕方の海辺に佇む原田の映像が挿入される。

「Eyja」からの 1.「夢のゆりかご」はイントロで子供の声が流れ、ピアノ、バイオリン、アコースティック・ベースとアコースティック・ギター(ローデンを使用)による静かな演奏。1983年に原田が歌った初めての大貫さんソング 2.「地下鉄のザジ」は本コンサートの中では軽快な曲で、原田も身体を揺らしながら歌っている。伊藤はここではグレッチのエレキ・ギターを弾いている。

コンサートを通しての印象として、伊藤はエレキ・ギターを多く弾いているが、バンマスの仕事に専念してソロは取らない。その分伊藤のバイオリンが表に出ることが多くなっている。また彼女が多くの曲でバック・ボーカルやハーモニー・ボーカルを担当している。

淡々とした感じのパフォーマンスで、ステージ上のトークも少なめ。「Eyja」の雰囲気に沿ったものといえよう。

なお本作は2枚組になっていて、2枚目は細野晴臣がゲスト出演した2010年4月12日Billboardのステージから3曲、コンサートの舞台裏映像、アイスランドにおける「Eyja」のレコーディング風景、ミュージックビデオ「Fine」などが収められている。

雰囲気の良いバンドをバックに、原田が気持ち良さそうに歌っている。

[2025年9月作成]


Discover Vol.II 山田タマル (2010)  Power Play Music   



 

7. 都会 [作詞作曲 大貫妙子 編曲 太田貴之 or 平畑徹也] 7曲目

タマル: Vocal, Producer
平畑徹也: Keyboards
太田貴之: Guitar, Slide Guitar
MIYA (三宅信也): Wood Bass
田中真二: Drums

注: 2010年11月から2016年まではアーティスト名を「タマル」に改名していたので、「Vol.II」発表時は「タマル」名義。


写真上: Discover Vol.II (「都会」収録) 2010年11月24日発売
写真下: Discover Vol.I  2010年6月18日発売

7. Tokai (City) [Words & Music: Taeko Onuki, Arr: Takayuki Ota or Tetsuya Hirahata] 7th track by Tamaru from the album "Discover Vol.II" on November 24, 2010
 
 

山田タマル(1982- 東京都出身)は主にインディーズで活躍するシンガー・ソングライターで、現在も元気に活動中。そんな彼女が2010年にセルフ・プロデュースにより2枚のカバーアルバムを出した。6月発売の1枚目が洋曲、5ヵ月後の2枚目が日本の歌をメインとした選曲だった。あまりジャンルにこだわらず、本人が歌いたい曲を選んだ感じで、ステージ演奏に近い感じのサウンドになっている。その2枚目の「Vol.II」に大貫さんの「都会」が入っている。

7.「都会」のコードは原曲とほぼ同じ感じであるが、こちらのほうがよりリラックスした感じの演奏・歌唱で、イントロはアコースティック・ギターのアルペジオ、途中からエレキピアノとリズムセクションが加わり、間奏はスライドギター。山田は丁寧に歌っている。

その他の曲について [編曲 太田貴之 or 平畑徹也]
1. 遠くに行きたい [作詞 永六輔 作曲 中村八大] ジェリー藤尾 1962 テレビ番組「遠くへ行きたい」で有名になった。
2. 黄昏のビギン [作詞 永六輔 作曲 中村八大] 水原弘 1959 元はシングルB面だったが、多くの歌手に歌い継がれてスタンダードに。ちあきなおみ1991年のカバーが有名。
3. 中央フリーウェイ [作詞作曲 荒井由美] 荒井由美 1976 結婚前のアルバム「14番目の月」に収録された名曲。
4. マンハッタン・キス [作詞作曲 竹内まりや] 竹内まりや 1992 同名映画の主題歌。ここではジャズのアレンジ。
5. 花 [作詞作曲 喜納昌吉] 喜納昌吉とチャンプルーズ 1980  1995年の石嶺聡子のカバーでヒットし、世界各国で歌われるようになった。
6. 異邦人[作詞作曲 久保田早紀] 久保田早紀 1979 最初CMソングで流れ、エキゾチックなムードが受けて大ヒットした曲。
7. 都会
8. The Water Is Wide (Bonus Track) [スコットランド民謡] 本アルバムの中で唯一の外国曲。古くからある民謡をピート・シーガー等が歌って広め、私としては1991年のカーラ・ボノフのカバーが一番。そういえばNHK朝ドラの「マッサン」2014-2015にも使われていたね。ここでは伴奏で「Joy To The World」のメロディーが流れるアレンジ。Skoop On SomebodyのTAKE (武田雅治)がゲストで登場しデュエットで歌っている。

原曲に囚われず、独自のアレンジで歌っている曲も多いが、奇をてらわない素直で自然な感じに好感が持てる音作りで、彼女の歌声の魅力をしっかり引き立てている。


ついでに「Vol.I」の曲についても触れます (2枚目と同じミュージシャンによる録音のため雰囲気は同じ。編曲 太田貴之 or 平畑徹也)。
1. Smile [作詞 John Turner, Geoffrey Parsons 作曲 Charlie Chaplin] チャップリンが1936年に作曲したメロディーに歌詞を付けて、1954年ナット・キング・コールによりスタンダードとなった。
2. コーヒー・ルンバ [作詞作曲 Jose Manzo Perroni 訳詩 中沢清二] ベネズエラの作曲家によるスペイン語曲「コーヒーを挽きながら」1958 がオリジナル。1962年の西田佐知子の翻訳カバーが日本での定番。
3. My Favorite Things [作詞 Oscar Hammerstein II 作曲 Richard Rogers] ブロードウェイ 1959でメアリー・マーティンが、映画 1965でジュリー・アンドリュースが歌った「Sound Of Music」の挿入歌。ここではジャズっぽいアレンジ。
4. Blackbird [作詞作曲 John Lennon, Paul McCartney] The Beatles 1968 アルバム「The Beatles (White Album)」収録のフォーク調の曲。ここでのピアノをメインとしたアレンジが面白い。
5. Love Me Tender [作詞 Ken Darby 作曲 George R. Poulton] Elvis Presley 1956 この曲については説明不要。
6. All You Need Is Love [作詞作曲 John Lennon, Paul McCartney] The Beatles 1967 シングル(編集アルバム「Magical Mystery Tour」に収録) 1967年通信衛星による宇宙中継特別番組で本曲の演奏シーンが世界24か国に同時放送された。原曲の派手な音作りに対し、ここではオーソドックスなアレンジになっている。
7. 君の瞳に恋してる [作詞作曲 Bob Crewe, Bob Gaudio] Frankie Valli 1967 英語タイトルは「Can't Take My Eyes Off You」 名曲ですね〜。1982年にBoy Town Gangがディスコ調アレンジでカバーしている。
8. 言葉にできない [作詞作曲 小田和正] オフコース 1982 本アルバムでこの曲のみ日本の歌。 

本当に好きな曲を歌っているという気持ちが伝わってくる作品。大貫さんの「都会」も誠実なカバーです。

[2025年7月作成]


 
Qualia  福原タカヨシ (2010)  PSW   
 

7. 春の手紙 [作詞作曲 大貫妙子 編曲 福原タカヨシ] 7曲目

福原タカヨシ: Vocal, Acoustic Guitar
西山哲穂: Slide Guitar

2010年12月1日発売

7. Haru No Tagami (Spring Letter) [Words & Music: Taeko Onuki, Arr: Takayoshi Fukuhara] 7th track by Takayoshi Fukuhara from the album "Qualia" on December 1, 2010

 
帯のキャッチフレーズ: 稀代のソウル・ミュージック・スタイリスト=TFが贈る、時間と距離を超越する「質」にこだわった渾身のカヴァー・アルバム (注: TFは福原のイニシャル、アルバムタイトル「Qualia」は言葉では言い表せない「感覚質」のこと)

帯に掲載された小坂忠の賛辞:気持ちのよいアルバムだ。声の質って大事なんだよね、巧さだけじゃ伝わらないものを伝える力がある。ほっとしたり、何かを気づかせてくれたり

福原タカヨシ(1977- )はソウル、ゴスペルを愛するシンガー・ソングライター。シングル、アルバムの発表、コンピレーションアルバムへの参加、各地でのコンサート開催の他に、キリスト教徒としての教会活動、ゴスペル・グループの一員としての音楽活動をしてきた彼が制作したカヴァーアルバムが本作だ。彼が愛する古今、内外のソウル・ミュージックの名曲が収められている。

大貫さんの「春の手紙」はテレビドラマ「家裁の人」のために作曲され、1993年にシングル、2005年のアルバム「One Fine Day」に山弦のバックによる別バージョンが発表されている。福原がカバーの参考にしたのは後者のほうで、ソウル・ミュージックのカバーアルバムにこの曲を入れるなんて一見場違いに思えるけど、実際聴いてみると見事にソウルフルで、他の曲と調和している。HMV&BOOKSのオンラインサイトの記事「福原タカヨシ全曲解説」2010年12月7日付で、本人が本曲について以下のとおりコメントしている。

TBS系ドラマ「家裁の人」の主題歌となったオリジナル・バージョンもさることながら、この曲の"2005 version"を初めて聴いたとき、”純朴でいて深い”歌詞の世界と大貫さんの歌声、そして山弦さんの奏でるアコースティック・ギターが”完璧”に溶け合っている世界にとても深い感動をおぼえました。大貫さんの歌詞は、人称の視点を変えるとまた別の世界が見えてくるので、聴くごとに新たな発見と広がりを感じます。アレンジについては、やはり自分にとって自然な”歌+ギター”という編成でチャレンジしたいなと思ったのですが、正直なところ、前述の「"2005 version"編曲との違いを出せるのか?」という課題と、「カヴァーの意味」ということをあらためて考えさせられた曲でした。”自分の歌”を追い求めていきながら、何度もライヴで歌わせていただき、その中で練られていった部分が大きいと思うのですが、そういった意味で、この曲は特に、一つ一つのライヴで育ててもらった”感謝の実”だと思っています。

コンサートで歌い込んだ感じの歌唱で、ソウルに満ちた暖かみのある声が本当に魅力的。ライブでは弾き語りが常というギターの伴奏も上手い。それに加えて同じ敬虔なキリスト教徒で音楽仲間の西山哲穂(「てつお」と読む)のスライド・ギターがいい味を出している。

他の曲について(以下 特記ない場合は 編曲 福原タカヨシ)
1. 夢の中であえるでしょう (作詞作曲 高野寛)高野寛 1994。 もともとキングトーンズのために書いた曲を、彼が坂本龍一編曲で先行リリースした作品。翌年本曲を含むキングトーンズのアルバム「Soul Mate」が発売された。シュガーベイブの「Down Town」1975に並ぶジャパニーズ・ソウルの名曲。ここでの弾き語りによるカヴァーは秀逸。
2. スウィートソウル(作詞作曲 堀込泰行)キリンジ 2003。堀込兄弟の弟の作品。福原のミックス・ヴォイスによる高音の歌声は凄いね。ライヴな感じのバンドによる演奏もいい。
3. 君のために (作詞作曲 SAKURA) SAKURA 1998。1980年代以降はビートが効いたダンサブルな曲が主流となったソウル音楽のなかで、こんな1970年代R&B風のゆったりしたバンド・アレンジは懐かしく、逆に新鮮に聞こえる。
4. Inside My Love (作詞作曲 Minnie Riperton, Richard J. Rundolph, Leon Ware) Minnie Riperton 1975。オリジナルは全米76位。有名な「Loving You」1975 全米1位に勝るとも劣らない曲だと思う。共作者のレオン・ウェアーは1979年にセルカバーしている。ここでの躍動感あるバンドサウンドと歌唱も素晴らしい。
5. Say You Love Me (作詞作曲 Patti Austin) Patti Austin 1976。この曲の詳細については 「50〜90年代の名曲集」の「Say You Love Me」を参照ください。ここではソウルシンガー mimi-Kとのデュエット。私が大好きな歌なので、うれしい!
6. そして僕を愛して(作詞 ORITO 作曲 ORITO, 中村成孝, 深尾尚宏) ORITO 1997。2008年心不全のために急死したソウル・シンガーORITO(本名 折戸都志郎)のデビュー・シングルにして名曲。ここではアコースティック・ギター2本によるしっとりした演奏。
7. 春の手紙
8. Music (作詞作曲 Omar Lye Fook) Omar 1992。ブリティッシュ・ソウルの曲で、本アルバムでは唯一モダンなアレンジによるサウンド。
9. 一人じゃないよ (作詞作曲 小坂忠)小坂忠1977。アルバム「Morning」1977収録。小坂一人の多重録音によるゴスペル風のアカペラ・ソングで、彼がクリスチャンとしてゴスペル・シンガーに転身する過渡期の作品。同じキリスト教徒で、小坂を師と仰ぐ福原は彼へのオマージュとしてギターと簡単なパーカッションの伴奏のみでカバーしている。
10. Give Love On Christmas Day [作詞作曲 Berry Gordy Jr., Alphonso Mizell, Freddie Perren, Deke Richards, Christine Parren 編曲 シゲ山本] The Jackson 5 1970。モータウン・レコーズのクリスマス・ソングとして制作されたのもので、リード・ボーカルは若き日のマイケル・ジャクソン。本曲はボーナス・トラックで収録されたもので、ストリングスをバックに切々と歌ってる。 

注: 上述のセルフ・ライナーノーツにつき、これらの曲についてのコメントも素晴らしいので、興味のある方は是非サイトを参照ください。

彼はその後、2015年演奏旅行中に交通事故に遭い両足に重傷を負ったが、懸命のリハビリにより復帰。現在も活動を続けている。

目が覚めるような芳醇な「春の手紙」のカバー。

[2025年8月作成]


2011年  東京オアシス(オリジナル・サウンドトラック (2011/10/12発売)の頃    
せんせいっしょにうたお〜 @ わだみやこ & ながそようこ (2011) 音楽センター  
 

1. メトロポリタン美術館 [作詞作曲 大貫妙子] 9曲目

わだみやこ: Vocal

ながそようこ: 監修責任者

2011年4月20日発売


1. Metropolitan Bijutsukan (Metropolitan Museum) [Words & Music: Taeko Onuki] 9th Track by Miyako Wada from the album "Sense Issho Ni Utao" (Ma'am Let's Sing Together) on April 20, 2011

(株)音楽センターは、CD・DVD・楽譜の販売、音楽教室の開催、アーティストによるコンサート、教育・保育に係るイベントの開催などを行っている。同社が2011年に発売したCD「せんせいっしょにうたお〜」は5枚からなる子供向け童謡集のシリーズで、同じタイトルの楽譜集も発売されている。歌っているのはながそようこ(長曽葉子)、わだみやこ(和田みやこ)等で、その第1集に大貫さんの「メトロポリタン美術館」が入っている。

伴奏はシンセサイザーと打ち込みによるもので、サウンド面で独自のアイデアは見当たらない。わだのボーカルは「歌のおねえさん」的。まあ安心して聴いていられるね。

インターネットで見つけた彼女のプロフィールには、「大学在学中より声楽を学ぶ。小学校教諭を経て、こどもの文化運動に参加。心を打つ澄んうたごえには定評がある一方、こどもと泥まみれになって遊ぶのがとてもよく似合う不思議な人」とあった。なお彼女に関して調べたが、本作以外には、2009年8月にながそと一緒に開催した「せんせいっしょにうたお〜講習会」(子供達を指導して一緒に歌い合奏するイベント)の活動記録しか見つからなかった。講習会の時期がCDよりも前なので、その好評を受けてCD化の企画が立ち上がったのだろう。

CDには28トラック収録されているが、内14曲が歌入り、残りが同じ歌のカラオケという構成で、歌入り14曲中9曲がわだ、4曲がながそ、1曲が二人による歌となっている。ながそは大学卒業後に養護学校の講師となり、障害児の音楽教育に関わる他、子供の歌の作曲・編曲・ピアノ演奏や、幼稚園・保育園・小学校や福祉施設等で音楽活動を行っていたそうで、コンサートの記録が残っている。本CDでは監修責任者を務め、楽譜集ではピアノ、合奏のアレンジを担当。

[2025年7月作成]


 
Midnight Explorer サノトモミ (2011)  April 
 

1. 都会 [作詞作曲 大貫妙子 編曲 林有三] 3曲目

サノトモミ: Vocal
林有三: All Instruments (except Guitar), Producer
竹中俊二: Guitar

金井緑: Excecutive Producer

2011年9月14日発売

1. Tokai (City) [Words & Music: Taeko Onuki, Arr: Yuzo Hayashi] 3rd track by Tomomi Sano from the album 'Midnight Explorer' on September 14, 2011

  
エイプリル・レコードはインディー・レーベルの会社で、他に放送用音源の製作、アナログ・レコードやCDの受託製造などを行っている。クニモンド滝口、林有三、押塚丘大からなるユニット、流線形のファースト・アルバム「City Music」が2003年当該レーベルから発売され、そこでのゲスト・ボーカリストがサノトモミ(1975- 東京出身)だった(流線形はその後同レーベルから離れて瀧口のソロユニットとなり、2008年に比屋定篤子を招いて大貫さんの「何もいらない」が入ったアルバム「ナチュラル・ウーマン」を出している)。一方サノは2005年に「サイレントフライト」でソロデビューし、続いてエイプリル・レコードの経営者でソングライターでもある金井緑が実行役となって制作したセカンド・アルバムが本作だ。全8曲中3曲がカバーで、他は3曲が金井の作詞作曲、残りの2曲が金井作詞、音楽監督の林有三作曲となっている。シティ・ポップの王道というべき内容で、洗練されたアレンジと演奏をバックに歌うサノの歌声は、アイドル系のような無垢な声質でありながら、どこかクールで退廃的な大人のムードを漂わせていて、真夜中の部屋の明かりを消して聴いていると、心が透き通り都会の夜景が目に浮かんでくる。

1.「都会」のグルーヴ感はオリジナルとほぼ同じで、あえて変えずに(変えようがなく?)林が敬意を表したのだろう。原曲の坂本龍一による派手なシンセソロに対して、ここでは竹中俊二によるギターソロがフィーチャーされる。 サノの憂いを帯びた声が曲にぴったり合っているので、聴いてきて気持ちが良い一曲だ。

他のカバー曲について(以下編曲 林有三)
「夢は波に乗って」(作詞 伊達歩 作曲 山本達彦) 4曲目 山本達彦 1979 アルバム「メモリアル・レイン」収録。浜辺の街を描いたボサノバ調の佳曲で、オリジナルのアレンジは松任谷正隆。
「きっと言える」 (作詞作曲 荒井由美)7曲目 荒井由美 1973 2枚目のシングル、アルバム「ひこうき雲」 本格的に売れ出す前の初期の名曲で、当時不思議に響いた転調がとても新鮮な曲だった。荒井(松任谷)由美の曲は、ハイファイセットの山本潤子を除いて、他の人が歌っていいなと思うことがないけど、このカバーは例外。いつもより低めのキーが魅力的なサノのヴォイス、カッコイイ竹中のギタープレイ、林の丁寧な編曲、特にオリジナルのようにフェイドアウトせず、しっかりと終わっているところもとてもいいね〜

オリジナル曲について
どれもいいけど、あえて挙げるとタイトル曲の「ミッドナイトエクスプローラー」(作詞作曲 金井緑)1曲目と、最後の曲 「東京タワー」(作詞 金井緑 作曲 林有三)8曲目かな。いずれも歌詞・サウンドに浮揚感があって、サノのクリスタルな歌唱がぴったりはまっている。

サノトモミは北海道在住で、現在も各地で不定期なコンサート活動を続けている。

シティ・ポップの究極的なサウンドによる「都会」のカバーだ。

[2025年7月作成]


 
手と手  illy@奏 (2011)  Ring Ring 

 

8. 彼と彼女のソネット [作詞 Catherine Cohen, Regis Wargnier 作曲 Romano  Musumarra 日本語詞 大貫妙子 編曲 illy@奏、重森美晴] 8曲目

illy: Vocal
koHta: Bass
重森美晴: Keyboards, Guitar etc
大島香: Drums

赤坂守: Producer

2011年10月5日発売

1. Kare To Kanojyo No Sonnet (His And Her Sonnet) [Words: Catherine Cohen, Regis Wargnier, Music: Romano Musumara, Japanese Lyrics: Taeko Onuki, Arr: illy@kanade , Miharu Shigemori] 8th Track by illy@kanade from the album "Te to Te"(Hand To Hand) on October 5, 2011

 
illy@奏(イリィ アット カナデ)は、シンガー・ソングライターのillyとベーシストkoHtaのユニットで、マルチ奏者重森美晴のサポートを得て制作した彼ら唯一のアルバム。

illy(イリィ)は 1984年生まれで奈良県出身。インディ・レーベルから数枚のソロアルバムを発表。コンサート活動の他にYouTubeへの動画投稿もしている。また石川菊理子(いしかわ くくりこ)という名前で女優として活動しており、舞台劇、テレビドラマ、YouTubeドラマ、CM等に出演、最近では2025年3月30日放送の「NHK総合診療医 ドクターG Next」の「左胸が痛い」の再現映像に出演している。koHtaの本名は山地恒太で、同じく奈良県出身。アーティストのライブ、レコーディングやテレビ番組などに参加。またギターとの二人組ユニット Mykeysで活動したり、自己のYouTubeサイトでフィンガースタイルのベースソロによるアレンジ作品を披露している。重森美晴はギタリストととしてハードロック・バンド Still Aliveでメジャーデビューし、様々なアーティストのアレンジや伴奏を務めて、現在はロックグループ PENICILLINなどのプロデュースを手掛けている人。

収められた8曲は、大貫さんが日本語詞を書いた曲を除き全てillyの作詞作曲で、ユニットではあるが彼女主導になっていて、相方koHtaと重森はアレンジとサウンド・メイキングでサポートしている。オリジナル作品の歌詞は、彼女の人生観・価値観が強く投影された内容が多く、ラブソングにおいても恋愛感が伝わってくるもので、歌うことで自己表明したいという気持ちが強く出た作品になっている。

その中で最後の曲として収録された8.「彼と彼女のソネット」は、ボーナストラックまたはアンコール的な位置付けなっている。本人のコメントは以下の通り。

レジス・ヴァルニエ監督の映画「悲しみのバイオリン(フランス語版)」(1986年)の主題歌「悲しみのアダージョ (原題「T'en va pas」を
原田知世さんが大貫妙子さんの日本語詞により、「彼と彼女のソネット」の題名でカバーされ、大貫さんご自身も歌われているこの曲は、時を経ても色褪せない名曲の1曲ではないでしょうか。
私も大好きな曲で、カバーさせていただきました。

気持ちが込められたボーカルを支えるのは、モダンな感じのアレンジで、特に間奏のソロと終盤のボーカルに寄り添うピアニカが愛らしい。

他の曲(作詞作曲 illy 編曲 illy@奏、重森美晴)では、「春のカケラ」1曲目が彼女の信条が特に強く出た力強い作品。タイトル曲の「手と手」7曲目は、3猿の概念をもとに「見ない、聞かない、言わない」ために使われる手を人と繋ぐために使おうと歌いかけていて、コミュニケーションの大切さを説いている。


彼女はYouTubeサイトで、オリジナルやカバー曲を歌う動画を投稿していて、そこには本アルバム全曲を歌詞付きの動画で観ることができる。またそこには大貫さんの「突然の贈りもの」をギターのみの伴奏で歌う動画もあるので、こちらも視聴お勧めです。

純な心で歌われた「彼と彼女のソネット」。

[2025年10月]


 
2012年  東京オアシス(オリジナル・サウンドトラック (2011/10/12発売)、Tint (2015/6/10) の頃     
Home  井上侑  (2012)  Shinko Music   

 

3. メトロポリタン美術館 [作詞作曲 大貫妙子 編曲 清水一登、片寄明人] 3曲目

井上侑: Vocal
清水一登: Piano

片寄明人: Producer


2012年6月6日発売

1. Metropolitan Bijutsukan (Metropolitan Museum) [Words & Music: Taeko Onuki, Arr: Kazuto Shimizu, Akito Katayose] 3th Track by Yu Inoue from the album "Home" on Junel 6, 2012

井上侑(1987- 愛媛県生まれ、東京都育ち)は、シンガー・ソングライターとして2000年代後半から自主制作盤の発表やライブハウス、ストリート・ライブなどの音楽活動を始めて、メジャー・レーベルや自主制作で作品を発表、現在も活動を続けている。本作は彼女が24歳の時のアルバムで、通常自作曲を弾き語りをする彼女が、ピアノ伴奏を他人に任せて「NHKみんなのうた」の歌唱に専念したもの。

片寄明人(1968- ) は音楽プロデューサーとして活躍しながら、奥さんのChocolatとのデュオ Chocolat & Akitoのアルバムを出した人。デュオ名義で、本ディスコグラフィーに登場したコンピレーション・アルバム「Lingkaran For Babys」2007や「Pure Voice〜J Cover〜」2008に参加している。清水一登 (1956- ) はヒカシューのメンバーで、キーボード以外に様々な楽器を演奏するマルチ・プレイヤー。

3.「メトロポリタン美術館」を歌う井上の声は、若々しく素直でピュアな魅力がある。清水の伴奏は、原曲のアレンジをピアノ一台で踏襲した感じ。演奏・歌ともにシンプルな美しさにあふれている。本曲の次は、大貫さんが「HNKみんなのうた」1983で歌った4.「みづうみ (「ペール・ギュント」組曲第2番「ソルヴェイグの歌」から)」(作詞 Honrik Ibson 訳詩 山川啓介 作曲 Edvard Hagerup Grieg)。大貫さんが作詞・作曲に関与していないので、オリジナルは本ディスコグラフィーの「Various」に掲載し、ここでのカバーは対象外とした。両者を聴き比べると、大貫さんのひんやりとした声からは、夜明けの神秘的な風景が目に浮かぶが、井上の声は朝日が差した暖かみのある雰囲気を醸し出しているように思える。

他の曲について (編曲は 清水一登、片寄明人。表示順は曲名、作詞作曲者、「NHKみんなのうた」のオリジナル・シンガー、初出年、特記事項)
1. 赤とんぼ(作詞 三木露風 作曲 山田耕筰)東京放送児童合唱団 1965。三木が1921年頃に書いた詩に、1927年山田が曲をつけたもの。清水のピアノのコードは、オリジナルとは異なるモダンな響きで面白い。 1961年放送開始の「NHKみんなのうた」の初期は、既存曲のカバーが多かった。
2. 太陽の子どもたち(作詞 あまだしん 作曲 小野リサ) 小野リサ、松原典子(東京少年少女合唱隊) 1992。自然と子どもたちのふれあいを歌った名曲。
3. メトロポリタン美術館
4. みづうみ
5. 童神 〜天の子守歌〜 (作詞 古謝美佐子 作曲 佐原一哉) 山本潤子 2002。ハイファイセット解散後の山本がソロで歌っている。沖縄音階による美しい歌で、オリジナルは作詞者(作曲者は夫)の古謝美佐子1992で、夏川りみ 2003のカバーが有名。井上の優しさ一杯の歌いっぷりがいいね。
6. 僕は君の涙 (作詞作曲 太田裕美) 太田裕美 1998。原曲はエレクトロ・ポップ風のアレンジだったが、ここでのピアノのみの伴奏とストレートな歌唱は秀逸。
7. 大きな古時計(作詞作曲 Work Henry Clay 訳詞 保富庚午)立川澄人 長門美保歌劇団児童合唱部 1962。原曲は1876年出版。
8. クマのぬいぐるみ(作詞作曲 みなみらんぼう) 吉岡雄介(東京放送児童劇団)1987。清水のニューオリンズ風ピアノが素晴らしい。
9. アオゾラ (作詞作曲 吉本佳代)吉本佳代 2005 当時新人だった富山県在住のシンガー・ソングライターの作品。世界の平和を祈る本当にピュアな曲・歌唱。
10. おもいでのアルバム(作詞 増子とし 作曲 本田鉄麿) ダークダックス 1981。 1982年の芹洋子のバージョンもある。幼稚園の卒園式で歌われる定番曲。
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誠実でピュアな歌とピアノ伴奏による名曲・佳曲に心が震える。

[2025年8月作成]


  
Photograph  東京サンセットガールズ  (2012)  MIN Label/Ardeur    

 

3. 夏に恋する女たち [作詞作曲 大貫妙子 編曲 大久保治信 コーラスアレンジ 吉田朋代、藤名美穂] 3曲目

吉田朋代、藤名美穂: Vocal, Back Vocal
大久保治信: Keyboards
沢村繁: Piano
池田邦人: Guitar
中村雅雄:Bass
廣石恵一: Drums

2012年6月27日発売

3. Natsu Ni Koisuru Onna Tachi (Women In Love In Summer) [Words & Music: Taeko Onuki, Arr: Harunobu Okubo, Chorus Arr: Tomoyo Yoshida, Miho Fujina] 3rd track by Tokyo Sunset Girlz from the album "Photograph" on June 27,2012
 

東京サンセットガールズは、バンド仲間やスタジオミュージシャンが集まって結成したバンドで、主に海外や日本の名曲をライブで演奏していた。同時期にオメガドライブのメンバーが結成したライブバンド「東京サンセットボーイズ」のスピンオフとのことで、2名の女性ボーカルが売りもの。メンバーは元オメガドライブ、当時クレイジーケンバンドのドラマーだった廣石恵一(2025年没)、キーボード奏者の大久保治信、林哲司などとバンドを組んでいた吉田朋代(ボーカル)など。

「Photograph」は彼らが2012年に出したミニアルバムで、シティ・ポップから歌謡曲に近い曲まで、幅広い選曲になっている。シンセサイザーでブラスやストリングスを再現した独自のアレンジで、ライブで磨いた演奏が聴きもの。大貫さんの 3.「夏に恋する女たち」は、イントロのアレンジとガッツのあるソリッドなプレイが新鮮。リードボーカルは二人が交替にとっているようで、コーラス部分でのハーモニーがかっこよく決まっている。

その他の曲について
1. 唇よ、熱く君を語れ [作詞 東海林良 作曲 渡辺真知子] 渡辺真知子 1980
2. フライデイ・チャイナタウン [作詞 荒木とよひさ 作曲 海老名泰葉] 泰葉 1981
3. 夏に恋する女たち
4. 音楽のような風 [作詞作曲 EPO] EPO 1985
5.恋におちて [作詞 湯川れい子 作曲 小林明子] 小林明子1985
6.飾りじゃないのよ涙は [作詞作曲 井上陽水] 中森明菜 1984
7. 真夜中のドア [作詞 三浦徳子 作曲 林哲司] 松原みき 1979

お馴染みの曲を楽しそうに演奏・歌っているのがいい感じ。

[2025年9月作成]


The IDOLM@STER ANIM@TION MASTER 生っすかSPECIAL 03 (2012)  日本コロムビア    
 

1. 会いたい気持ち [作詞作曲 大貫妙子 編曲 丸山哲生] 8th track


秋月律子(声 若林直美): Vocal
丸山哲生: Arranger
中川浩二: Sound Producer

写真: 向かって左の眼鏡の娘は秋月律子、右は高槻やよい (2012年9月26日発売)

1. Aitai Kimochi [Words & Music: Taeko Onuki, Arr: Tetsuo Maruyama] 8th track by Ritsuko Akizuki (Voice: Naomi Wakabayashi) from the album "The IDOLM@STER ANIM@TION MASTER Nama-Suka SPECIAL 03 on September 26, 2012

 
THE IDOLM@STER(略称 アイマス)は、バンダイナムコエンタープライズ(旧ナムコ)が2005年に始めた育成シュミレーション・ゲーム。765プロダクションに所属する候補生のなかから好きな人を選んで、プロデューサーとしてファンに支持されるアイドルの育成を競うもの(すみません。私はこの手のゲームをやった事がないので実感わきません)で、大ヒットにより漫画、アニメ番組やCDの制作、声優達によるコンサートの開催などメディアミックスの一大シリーズとなった。

アニメーション「The IDOLM@STER」は、ゲームと同じキャラクターが登場するが、独自のストーリーで25話+特別編が制作され、2011年7月〜12月にテレビ放送された。その第15話より始まった、アイドル達が出演する劇中の生放送番組「生っすかSPECIAL」に沿ったCDが別途制作され、その第三部(3枚目)が本アルバムだ。それは番組から秋月律子(声 若林直美、元アイドル候補生のプロデューサー。眼鏡がトレードマーク。)、高槻やよい(声 仁後真耶子、アイドルのひとり)、プロデューサー(声 赤羽根健治 ゲームにおけるプレイヤーの立ち位置に相当)の3人が登場するバラエティーで、スタジオ内のオーディエンスの拍手歓声(いかにもわざとらしいのが面白い)の中、アニメの劇中番組と同じ構成で進行する。

オープニング・トークに続く曲は、ゲームでたびたび流れる「愛 LIKE ハンバーガー」(作詞 白瀬彩 作曲編曲 MBGI(田島勝朗) 歌 秋月・高槻)1st Trackで、ジャケットのイラストはこの曲から。本曲については様々な出演者が歌う複数の映像をニコニコ動画で観ることができる。そして各出演者の「チャレンジのコーナー」(例えば高槻は「先輩にタメ口をきく」など)とカバー曲の歌唱が入る。

大貫さんの「会いたい気持ち」は秋月律子が歌うカバー曲のひとつ。声を担当する若林直美(1975- 鳥取県生まれ、広島県育ち)は声優・舞台女優で、声優としては秋月の声が代表作。声優のアニメ・ヴォイスによる歌唱であるが、前向きな感じのこの曲には意外に合っていて、とてもいい感じ。でも好き嫌いが分かれるかもしれないね。打ち込みっぽい伴奏について、アルバムには編曲者のクレジットがなかったが、「アイマスDB」というサイトには丸山哲生とあった。一方アルバムには全体のSound Producerとして中川浩二の名前が載っているので、実際に音を作ったのはこの二人のうちのどちらかだろう。

他の曲について。「らぴゅらぴゅ」(作詞 ふじのマナミ 作曲 片岡嗣実 歌 高槻)4th Track はパーキッツ2004、「Brand New Wave Upper Ground」 (作詞 Yuki 作曲 Takuya 歌 秋月)5th Track はJudy And Mary 2000、「Yell 〜エール〜」(作詞作曲 小渕健太郎 歌 プロデューサー)7th Trackはコブクロ 2001のカバー。みな明るく真面目に歌っていて好感が持てる。「明日があるさ(ジョージアでいきましょう編)」(作詞 青島幸男 (替え歌 福里真一) 作曲 中村八大 歌 プロデューサー)8th Trackは、元は1963年のバラエティー番組の主題歌として坂本九が歌ったものだが、2000年コカ・コーラの缶コーヒー飲料「ジョージア」のCMに替え歌が使われてリバイバル・ヒットした曲で、吉本興行の芸人達やウルフルズなどいろんな人が歌った。また「トイレの神様」(作詞 植村花菜 山田ひろし 作曲 植村花菜 歌 高槻)11th Track は、植村の原曲に忠実に、9分54秒の長尺をじっくり歌っている。

バラエティー番組としての作りであるが、音楽はどれも真面目に取り組んでいて、それなりに面白い。アニメ・ヴォイスによる「会いたい気持ち」を楽しみましょう。

[2025年8月作成]


  
Your Time Route #1  一十三十一 (2012)  Billboard  
 

 
2. チャンス [作詞作曲 大貫妙子、編曲 クニモンド瀧口] 2曲目

一十三十一: Vocal
クニモンド瀧口: Synthesizer, Program
山口としお: Guitar, Keyboards, Program

注: 山口氏の名前については、漢字が不明のためひらがなで表記しました。

2012年11月14日発売

2. Chance [Words & Music: Taeko Onuki, Arr: Kunimondo Takiguchi] 2nd track by Hitomitoi from the album "Your Time Route #1" on November 14, 2012

これまで大貫さんの曲を多くカバーしてきた一十三十一(ひとみとい)が流線形のクニモンド滝口と組んで制作したカバーアルバムで、同年6月に発表したオリジナル作品のアルバム「City Dive」と対をなす存在。ライナーノーツの二人の対談によると、選曲にあたり二人でカラオケ・ボックスに行って(カラオケにない曲はPCで曲を持ち込んで)、実際に歌ってみて決めたという。2012年はシティポップ再評価が盛り上がってきた年で、その流れに乗って1曲を除き1980年の曲、そしてコスメティックというテーマで絞って、お洒落な女性の曲になったとのこと。

大貫さんの1.「チャンス」について、二人の対談の一部を引用しよう。

一十三十一: 大貫さんのことは、ずっとカッコイイ女性だなと尊敬し続けてきました。
瀧口: 今回「チャンス」を選曲したのは僕。これはカヴァーしている人があまりいなだろうなと思ったから。この8ビートの感じが大貫さんの中でも割と異色だなという新鮮さもあって。
一十三十一: 最初のミックスを聴いた時、実を言うと、歌っているのが大貫さんなのか私なのかわからなかった(笑)。
瀧口: アレンジにはジョー・ジャクソンの「ステッピン・アウト」のベースラインを採り入れています。

大貫さんの「チャンス」(1981年のアルバム「Aventure」収録)に対し、ジョー・ジャクソンの「Steppin' Out」全米・全英6位は少し後の1982年の曲で、当時とても新鮮に聞こえたシンセベースのラインは、大貫さんの曲にピッタリ嵌っている。それ以外は他の曲よりもオリジナルに忠実なアレンジで、歌い回しもそっくり。聴き比べて、大貫さんの歌声は「少年の心を持ち合わせた女性」であるのに対し、一十三十一は「少女の心を持ち合わせた女性」と感じた。

他の曲について (編曲 クニモンド瀧口)
1. Cha Cha Cha [作詞 Graziella Boido 訳詞 今野雄二 作曲 Fabrizio Baldoni, Beniamino Reitano, Feancesco Reitano, Bruno Rosellini] 石井明美 1986。テレビドラマ「男女7人夏物語」に使用され、英語の原曲とともに大ヒットした。もとは1985年のイタリア曲で、Finzy Contini(フィンツィ・コンティーニ)というダンスグループが歌っていた。原曲、石井のカバーのイントロで、車の止まる音に続いて「Baby, get on my Cadillac」とのたまう色男のセリフは、ここではクニモンドが担当。
2. チャンス
3. 夏の恋人 [作詞作曲 山下達郎] 竹内まりや 1978。竹内のデビューアルバム「Beginnings」収録の名曲で、後に夫となる山下達郎との初めてのコラボ作品。一十三十一にとって、彼女の父が北海道で経営していたレストランでよくかかっていた思い入れがある曲だそうだ。
4. 唇よ熱く君を語れ [作詞 東海林良 作曲 渡辺真知子] 渡辺真知子 1980。カネボウ化粧品のCMソングとして大ヒットした。この曲は彼女の声に合っているね。
5. ブラック・ムーン [作詞 来生えつこ 作曲 南佳孝] ラジ 1981。人気の高い初期の作品を意図的に外したとのこと。禁断の恋を歌った妖しい曲で、女性奏者ヤマカミヒトミのサックスソロが素晴らしい。
6. すみれ September Love [作詞 竜真知子 作曲 土屋昌已] 一風堂 1982。これもカネボウ化粧品のキャンペーン・ソング。
7. Silver Rain [作詞 安井かずみ 作曲 加藤和彦] 宮本典子 1981。日本のソウルクィーンだった彼女は1990年以降アメリカに移住し、mimiという名前で音楽活動を続ける。彼女の曲にしてはポップな感じで、程よいソウルが一十三十一にぴったり。
8. 手のひらの東京タワー [作詞作曲 松任谷由美] 松任谷由美 1981。松任谷のアルバム「昨晩お会いしましょう」収録で、テレビ番組「オレたちひょうきん族」のエンディング・テーマ曲。石川セリもほぼ同時に発表している。「手のひら」とは東京タワーの置物のこと。
9. 土曜の夜はパラダイス [作詞作曲 EPO] EPO 1982。これも「オレたちひょうきん族」のエンディング・テーマ曲に使用された。
土曜日の夜の開放的な気分を歌にしたもので、本アルバムもこの曲で明るく終わる。

とにかく聴いていて気持ちの良いアルバム。演奏の多くは打ち込みであるが、巧みな処理のため全然気にならない。

[2025年9月作成]


2013年  東京オアシス(オリジナル・サウンドトラック (2011/10/12発売)、Tint (2015/6/10) の頃     
都会 HF International (2013)  Spiral Beats Productions 
 





1. 都会 (City Lovers Rock Edition Vocal) [作詞作曲 大貫妙子 編曲 HF International] Single A面
2. 都会 (City Lovers Rock Edition Dub) [作詞作曲 大貫妙子 編曲 HF International] Single B面

Shiho.C: Vocal
福田征希: Piano, Synthesizer, Programming
平岩克規: Programming
戸城孝啓: Guitar

写真上: シングル(2013年2月22日発売 A面 City Lovers Rock Edition Vocal)
写真下: シングル(2013年2月22日発売 B面 City Lovers Rock Edition Dub)


1. Tokai (City) (City Lovers Rock Edition Vocal) [Words & Music: Taeko Onuki, Arr: HF International] Single A-Side
2. Tokai (City) (City Lovers Rock Edition Dub) [Words & Music: Taeko Onuki, Arr: HF International] Single B-Side
by HF International from the single on Febuary 22, 2013

 
HF International (アッシュエフ・インターナショナル)は、DJ平岩克規とマルチ奏者福田制希による名古屋在住のユニットで、本作がシングル・デビュー盤となる。大貫さん(作詞作曲)と坂本龍一(編曲)によるシティポップの名曲をラヴァーズ・ロックのサウンドでカバーしたもの。ラヴァーズ・ロックとは、イギリスに住むジャマイカ系移民がソウル音楽を取り入れて独自のサウンドに発展させたレゲエのサブジャンルのこと。ここではShiho.Cという、ちょっとソウルフルでかつクリスタルな歌声の女性歌手をフィーチャーして、スウィート・アンド・メロウなサウンドに仕上げている。

B面のタイトルについている「Dub」は、レゲエの原曲にエコー、リバーブ、ディレイなどのサウンド・エフェクトを施して別の曲に仕立て上げる制作手法で、ここではボーカル抜きのインストルメンタル・バージョンになっている。

本盤はその後希少盤として中古市場で高値を呼び、2016、2020、2023年に再発されるが、それらについては「都会 Re-Issue 2016」でふれることとする。

HF Internationalは他に面白い作品を出しているが、特に興味深いのは2016年に出したシングル「If You Want It」だろう。これはNiteflyteというアメリカのグループ1979年の曲(全米37位)のカバーなんだけど、ここでは明らかに、1980年2月17日のFM東京の番組「サウンドアプローチ」での山下達郎と吉田美奈子によるスタジオライブでの演奏をベースにしているのだ。HF Internationalのカバーを聴いていると、当時この放送を聴いてぶっ飛んだ記憶が生々しくよみがえってくる。

数ある「都会」のカバーのなかでも、文句なしに筆頭に挙げられる名作。

[2025年8月作成]


2013年  東京オアシス(オリジナル・サウンドトラック (2011/10/12発売)、Tint (2015/6/10) の頃    
Spring Is Mine Lilly me (2013)  evergreen presents  



1. 色彩都市 [作詞作曲 大貫妙子 編曲 松永宏紀] 1曲目

Lilly me: Vocal, Producer
越田太郎丸: Guitar
さくら: Violin
松永宏紀: Sound Producer

2013年4月17日発売

1. Shikisai Toshi (Colored City) [Words & Music: Taeko Onuki, Arr: Hiroki Matsunaga] by Lilly me from the album "spring is mine" on April 17, 2013

Lilly meは2000年に東京で音楽活動を開始。2007年からLilly meと名乗りライブを始めて、2008年と2009年に2枚のカバー・アルバムを発表。2013年に本作を出し、2016年に新アルバム制作のアナウンスをした後に表舞台から姿を消している。彼女に関しては、プロフィール等の資料がなく、わかったのは上記3枚のアルバムと数本のYouTube動画が残っていること、そして3人の女の子の母親(CDジャケット内に娘達との写真がある)として、日常生活に寄り添う音楽を創るという姿勢のみ。

本作は3枚目のアルバム。全7曲中3曲が欧米曲、2曲が日本曲のカバーで、残り2曲が本人が作詞・作曲に関わったオリジナルという構成。大貫さんの「色彩都市」は、ナイロン弦ギターとバイオリンを中心とする伴奏によるボサノヴァ・アレンジによるカバー。グロッケンシュピール風、ベースなどその他の音は明記されていないが、サウンド・プロデューサーの松永宏紀が担当しているものと思われる。Lilly meの歌声は優しい呟き系で、最初聴いて時折音程が不安定になるなと思ったが、何度か聞くうちに、ナチュラルな声の魅力の中に埋もれて気にならなくなった(と言っても、この声は聴く人により好き嫌いが別れるかもしれないね)。そして手作り感・透明感のある伴奏により、心地よい音楽になっている。

他の曲について (編曲は 松永宏紀)
1. 色彩都市
2. spring is mine [作詞 Lilly me 作曲 中川久史 Lilly me] オリジナル曲
3. How Deep Is Your Love [作詞作曲 B.A. Gibb, M.E. Gibb, R.H. Gibb] 1977 ビー・ジーズ 全米1位の名曲。ナイロン弦ギターのアルペジオのみによるシンプルな伴奏。キュートな声が曲に合っている。
4. Loving You [作詞 M. Riperton 作曲 R. Rundolph] 1974 ミニー・リパートンのこれまた名曲で 全米1位。2台のナイロン弦ギタ−とシンプルなパーカッションによる演奏で、イントロとエンディングの「ラララ」のコーラスに子供の声が入っている。
5. 世界の果て[作詞 Lilly me 作曲 中川久史 Lilly me] オリジナル曲
6. ベルベット・イースター[作詞作曲 荒井由美] 1976 荒井由美 アルバム「ひこうき雲」収録の初期の曲。原曲と異なるギターがメインのクリスタルな演奏が新鮮。
7. The Never Ending Story [作詞作曲 G. Moroder, K. Forsey] 1984 Limahl 同名映画の主題曲 全米17位。原曲はエレクトロ・ポップのサウンドだったが、ここでのボサノヴァ・アレンジもとてもいいね。

全体的に彼女の声に似合う曲が選ばれていて、優しい声、優しいアレンジによる「色彩都市」が聴ける。

[2025年7月]


   
こどもじゃず その6   ROCO (2013)  apart.  
 

12. メトロポリタン美術館 [作詞作曲 大貫妙子] 12曲目

ROCO: Vocal
Unknown: Piano, Toy Piano
Unknown: Baritone Sax
Unknown: Bass
Unknown: Drums

2013年5月5日発売

12. Metropolitan Bijutsukan (Metropolitan Museum) [Words & Music: Taeko Onuki] 12th Track by ROCO from the album "Kodomo Jazz Sono 6" (Kids Jazz No.6) on May 5, 2013
 

ROCO(本名 非公表 同名のシンガー・ソングライターがいるので注意)は2001年からアルバムを発表し、ヴィレッジ・ヴァンガードなどの雑貨屋で売れる。そしてポップ調ジャズにアレンジした子供向けの歌を「玩具ジャズ」と名付けて、2010年「こどもじゃず」というカバーアルバムを発表。それが大いに受けてシリーズ化した。本作は彼女の出産を記念して、ファンからのリクエストをもとに制作された6枚目にあたる。

最初聴いた時は歌声が子供向け過ぎるかなと思ったが、全曲聴くと結構多彩な歌い方をしているのがわかり、気にならなくなった。また各曲のアレンジが凝っていて、本気モードでクリエイティブな仕事をしていることがわかる。残念ながら伴奏者の氏名の記載がないけど、歌手とピアニストからは強いパートナーシップが感じられる。2010年代の彼女の活動記録を調べたところ、2014年10月5日付のプログで、同日の「こどもじゃず コンサート」のサポート・メンバー紹介の投稿があった。その時期から推測すると、本作のピアニストは北海道出身の木村トモカである可能性が高い。とはいえ、証拠がないので、上記のとおり「不明」とした。

収録曲はピアノ・トリオによる伴奏が主であるが、曲によってピアノのみだったり、ストリングスやクラリネットが加わっている。12.「メトロポリタン美術館」は、おそらくバリトン・サックスが加わっているようだ。トイ・ピアノがメロディーを奏でるアレンジが印象的。

他の曲は以下のとおり。
1. 思い出のアルバム [作詞 増子とし 作曲 本田鉄麿] 幼稚園の卒園式の定番曲。前半はトイ・ピアノ、後半はピアノ・トリオによるジャズワルツ。
2.どんぐりころころ [作詞 青木存義 作曲 梁田貞] コード進行とリズムが面白いアレンジ。間奏のピアノに意表を突かれる。
3. パンのマーチ [作詞 峯陽 作曲 小川寛興] 「みんなのうた」ペギー葉山1969がオリジナル。歌詞がとても面白い。
4. おべんとうばこのうた [作詞 不詳 作曲 わらべうた] 作者につき「作詞 香山美子 作曲 小森昭宏」とする資料もあった。ブルージーなジャズ・アレンジでスウィングするボーカル、歌詞が混ざったスキャットが傑作。
5. 赤鬼と青鬼のタンゴ [作詞 加藤直 作曲 福田和禾子] 尾藤イサト 1977年オリジナル。真面目にジャズりタンゴるピアノトリオに笑える。
6. チューリップ [作詞 近藤宮子 作曲 井上武士] エレキピアノによるモダンな和音による伴奏。途中からストリングスが加わる。
7. おはようクレヨン [作詞作曲 谷山浩子] 「みんなのうた」谷山浩子 1987がオリジナル。ピアノトリオとストリングスによる演奏でジャズの香りは薄め。動画がYouTubeに公開されている。 
8. きのこ [作詞 まど・みちお 作曲 くらかけ昭二] ピアノのみの伴奏。変てこな歌詞が素晴らしい。
9. ラクカラーチャ [作詞作曲 Traditional] 資料では日本語詞の作者に佐木敬とあった。変拍子のアレンジがユニーク。
10. ケンカのあとは [作詞 荒木とよひさ 作曲 三木たかし] 「ひらけ!ポンキッキ」ケント・ギルバート、ジュン・マリー 1973がオリジナル。クラリネットが伴奏に加わっている。
11. 大きな古時計 [作詞 保富康午 作曲 Henry Clay Work] この曲については説明不要。
12. メトロポリタン美術館
13. かめの遠足 [作詞 新沢としひこ 作曲 中川ひろたか] 「ぼくたちのうた」中川ひろたか 1988がオリジナル。カメらしいのんびりしたワルツ。
14. ピ ピカソ [作詞 矢倉邦晃、保山宗明玉、チャンキー松本 作曲 本間勇輔] 「ポンキッキーズ」モダンチョキチョキズ 1997。歌詞が飛んでる! オリジナルの濱田マリの歌が凄いが、ここでのボーカルも最高!
15. ゆりかごのうた [作詞 北原白秋 作曲 草川信] 最後は子守唄で、静かに安らかに終わる。 

ROCOはコンサート活動の他に、ソングライター、CMソング・シンガー、ナレーターなどで活動を続けている。このCDシリーズは本作で打ち止めとなったが、その後も「こどもじゃず・コンサート」は続き、本稿作成の2025年時点でも実施情報がインターネットに載っている。

ジャズのピアノ・トリオ、トイ・ピアノとバリトン・サックスの伴奏による「メトロポリタン美術館」。

[2025年9月作成]


Un Jour  Erika (2013)  Soho's Inc 

 

6. 都会 [作詞作曲 大貫妙子 編曲 ST Productions] 6曲目

Erika (西恵利香): Vocal

2013年6月15日発売

1. Tokai (City) [Words & Music: Taeko Onuki, Arr: ST Productions] 6th track by Erika (Erika Nishi) from the album "Un Jour" on June 15, 2013

 
西恵利香(1989- 埼玉県出身)はAeLL.という4人組アイドル・グループのリーダーとして2011年から2014年まで活動後、ソロに転向。アルバム・シングル制作、各種イベントへの参加、ラジオ番組出演などの活動を続け、結婚・出産の休業を経て2023年に復帰、2025年1月に最新作を発表している。本作は当時24歳の彼女がグループ在籍中に発表したミニアルバムで、ソロとしては初めてだったが、スピンアウト的な位置付けだったため、J-Popのカバーアルバムという軽い乗りで作ったのだろう。「Un Jour」は日本語で「ある日」という意味で、表紙は2015年以降トルコ在住の女流漫画家、市川ラクが書いたもの。「Erika」という名前になっているが、その後の作品は西恵利香という本名になる。打ち込みによるチープな感じのバック (注: けなす意味ではありません)と歌の上手いアイドル・ヴォイスの取り合わせが、ペカペカしたプラスチックのような煌めきのあるサウンドを生み出している。

「都会」はクラブ・ミュージック風のビートを効かせた軽快なアレンジで、西のボーカルも素直で軽やかな感じ。本作発売日の2日後に行われたライブハウス渋谷Glad(2020年閉店)でのイベントで、CDと同じ演奏をバックに本曲を歌う映像がYouTubeにあるが、そこではファースト・ヴァースの「眠らない夜の街 ざわめく光の洪水 通り色どる女 着飾る心と遊ぶ」で、「ざわめく...」と歌うところを間違えて「着飾る.....」と歌ってしまっているが、動ぜずに歌い切っている場面が面白い。なかなか度胸あるね!

その他の曲について : 曲目[作詞作曲編曲] オリジナルとその発表年。特記 
1. Morning Kiss [作詞 白井未留、藤木直史 作曲 藤木直史、神谷洵平 編曲 ST Productions] ジャンク フジヤマ 2010。山下達郎っぽいグルーヴの曲で、ジャンク フジヤマ(1983- )の本名は作詞作曲者の藤木直史。西はやる気満々で歌っているが、難しい曲でちょっと背伸びし過ぎかな?
2. Gift〜あなたはマドンナ〜 [作詞 小野健、EPO 作曲 EPO 編曲 夏目哲郎] 土岐麻子 2011。資生堂「エリクシール・シュペリエル」のCMソングということで、土岐麻子には軽すぎたが、ここでは丁度いい感じ。
3. 恋のサイダー [作詞作曲 クニモンド滝口 編曲 須藤雄毅] 流線形 2003。クニモンドのユニット、流線形の初アルバム、シングルでシンガーはサノトモミ。ここでのカバーはちょっと軽すぎるかもしれないけど、この軽さもそれなりにいいかも?
4. 水色の雨 [作詞 三浦徳子 作曲 八神純子 編曲 ST Productions] 八神純子 1978。ダンサブルなクラブ・ミュージック・アレンジによるカバー。なかなかいい感じの演奏と歌唱。
5. 真夜中のドア [作詞 三浦徳子 作曲 林哲郎 編曲 ST Productions] 松原みき 1979。 近年海外での再評価著しい曲。この曲については、ここでの軽い感じがベターなように思える。
6. 都会  

「水色の雨」を除く各曲につき、「都会」と同様のライブハウス渋谷Gladでの映像がYouTubeにあり。

クラブ・ミュージック風アレンジによるダンサブルで軽い感じの「都会」。

[2025年9月作成]


 
TOKYO野蛮人 / ニュアンスしましょ  藤澤志保 (2013)  Eat  
 





1. ニュアンスしましょ feat. HIRO:N [作詞 大貫妙子 作曲 EPO] Single B面

HIRO:N: Vocal
藤澤志保: Track Making

2013年7月5日発売

写真上: 「ニュアンスしましょ feat. HIRO:N」 B面 表紙
写真下: 「TOKYO野蛮人 feat. 荘野ジュリ」(作詞 康珍化 作曲 和泉常寛) A面 表紙

!. Nuance Shimasho (Let's Do Nuance) [Words: Taeko Onuki, Music: EPO] Single B-Side by Shiho Fujisawa feat. HIRO:N form the single TOKYO Yabanjin (Tokyo Barbarian) on July 5, 2013
藤澤志保(女優の藤澤志帆とは漢字違いの同姓同名)は、渋谷のクラブを本拠地として2000年代後半〜2010年代前半に活躍したソングライター、DJ、トラックメイカー。本作は彼女が2013年小西康陽主宰のEat Recordsから発売した7インチ・シングル・レコード。レーベル印刷は「TOKYO野蛮人」がA面と表示されているが、宣伝上はダブルエーサイド(両サイドA面扱い)なっていた。

1.「ニュアンスしましょ」は、大貫さんの歌詞とEPOのメロディーがファンタスティックな香坂みゆき1984年のシングル(資生堂CMソング)のカバーで、打ち込みによる軽快なエレクトロポップのクラブサウンドをバックに、ゲストのHIRO:N(ヒロン)がを歌っている。彼女(1979年北海道生まれ)は、2000年代にアルバム・シングルを出してたシンガー・ソングライターだ。

「TOKYO野蛮人」は、現在女優として活躍する菊池桃子(1968- )が、アイドル歌手から脱却してキーボード奏者の松浦義和が結成したバンドRA MU (ラ・ムー)で歌った曲で、彼らの3枚目のシングルかつアルバム「Thanks Giving」1988に収録された。アイドルとブラックコンテンポラリーを融合した野心的な音楽は、当時は売れずにグループも短命に終わったが、後年J-Popブームに伴い再評価され、オリジナルのレコード、カセットテープは中古市場で高値を付けている。

原曲は、ソウルフルなコーラスとブラスセクションが入ったビートの効いたバックと菊池のアイドル・ヴォイスのブレンドが、37年後の今聴いても色褪せ感が全く感じられない素晴らしい出来。ここでは特徴あるリフをフィーチャーしたソリッドなクラブサウンドに仕上げている。ゲスト・ボーカリストは後に作詞家として活躍した荘野ジュリ。

クラブサウンドが面白い「ニュアンスしましょ」。

[2025年9月作成]


 
はじまりの海  坂本真綾 (2013)  Flying Dog   








 

1. はじまりの海 [作詞作曲 大貫妙子 編曲 森俊之] Single
2. はじまりの海(TV Size) [作詞作曲 大貫妙子 編曲 森俊之] アルバム2曲目

坂本真綾: Vocal, Back Vocal
大貫妙子: Back Vocal
森俊之: Electric Piano (Rhodes), Piano, Organ, Programming
小倉博和: Guitar
鈴木正人: Bass
林立夫: Drums
Lenny Castro: Shaker

写真上: シングル (2013年7月31日発売) 1収録
写真中: アルバム「Follow Me Up」 初回限定盤(緑)と通常盤(赤) (2015年9月30日発売) 1収録
写真下: アルバム「TVアニメーション たまゆら〜もあぐれっしぶ〜 ボーカルアルバム うたとせ」 (2013年9月25日発売)2収録

1. Hajimari No Umi (The Sea Of Beginnings) [Words & Music: Taeko Onuki, Arr: Toshiyuki Mori] Single
2. Hajimari No Umi (TV Size) [Words & Music: Taeko Onuki, Arr: Toshiyuki Mori] Album 2nd track
by Maaya Sakamoto from the single on July 31, 2013, and the album "TV Animation Tamayura More Aggresive Vocal Album Utatose" on September 25, 2013

 
アニメーション・シリーズ「たまゆら」は、瀬戸内海に面した広島県竹原を舞台とした中学生の女の子の物語だ。当初2010年にOVAで発売され、テレビシリーズ第1期として「たまゆら〜hitotose〜」が2011年10月から12月まで、第2期の「たまゆら〜もあぐれっしぶ〜」が2013年7月から9月まで、各12話が放送された。そして2015年から2016年の4回、完結編が劇場公開された。

そのうち大貫さんの曲が使われた「たまゆら〜もあぐれっしぶ〜」全12話を観ることができた。幼い頃に亡き父と過ごした竹原で、父の形見のカメラで写真を撮りながら家族と友人に囲まれて過ごす1年間を描いたもので、高齢者の男性が少女向けアニメを鑑賞するという異様なシチュエーションだったが、私としてはとても面白く観ることができた。良かったのは悪人が出ないこと、若い男性がいないので色恋沙汰がないこと。ということであまり起伏に富んだストーリーではなかったが、友人や家族とのやりとりが四季の時間の流れのなかでピュアに繊細に描かれていた。

もうひとつ感心したのはディティールに凝っている事。舞台となった竹原は尾道と呉の中間にある海辺の街で、生まれ故郷の尾道を舞台とした作品を多く残した大林宣彦監督とは異なり、本作の監督佐藤順一(1960- 脚本と絵コンテも担当)は当地との所縁はなく、ストーリーに合った場所を探して見つけたとのことであるが、実在する街の景色・建物や瀬戸内海の景色の背景を愛情を込めてノスタルジックに描き、当地は本作を愛するファンの聖地になったという。私はまだ行ったことがないが、近い将来訪れてみたいと思っている。そして主人公が常時携帯している父の形見、ドイツ・ローライ社のカメラ。もとは1930年代に二眼レフ・カメラで一世を風靡した会社で、私はアントニオ・カルロス・ジョビンの名曲「Desafinado」1959の歌詞でその名を知った。本作に出てくるモデルはRollei 35Sという1974年発売のコンパクト・カメラで、当時の日本製カメラに比べて格段に高価なものだった。彼女の父親がそういうカメラを使っていたということは、写真への思い入れの強さを象徴している。しかもフィルム式というのがよい。デジタル・カメラが標準になりつつあった2010年代に、フィルム、現像・プリント代のかかる旧式カメラを使うことに作者のこだわりを感じる。

音楽の話に移ろう。

第1期(hitotose)はオープニング・テーマに坂本真綾(1980- 東京都出身 女優、声優、歌手、ラジオパーソナリティー、エッセイスト)が歌う「おかえりなさい」(作詞 坂本真綾 作曲 松任谷由美)が使われ、第2期(もあぐれっしぶ)は大貫さんに作詞を依頼したが、彼女からの希望により大貫さんが作曲もすることになったという。1.「はじまりの海」は彼女の作風としては大変明るい感じの、多感な女の子の青春を描いた前向きな歌詞とメロディーの歌になっている。なお本曲は当初シングルのみでリリースされ、2年後に発売されたアルバム「Follow Me Up」に収録された。

シングルのカップリング2曲目「いつものところで」は、坂本の詩に音楽ユニットRound Tableの北川勝利が曲を付けて編曲も担当。「おかえりなさい Acoustic Ver.」3曲目は第1期のテーマソングを異なるアレンジで再録音したもので、ショーロクラブの笹子重治のガットギターとアニメの音楽を担当した中島ノブユキのピアノによる伴奏で、曲が秘めていた別の魅力を引き出している。なお本曲はアニメ第2期の挿入歌として使用された。「メドレー"Roots of SSW"」は2013年4月25日東京Bunkamura オーチャードホールでのライブ録音で、過去の作品をメドレーにしたもの。

本シングルの1.「はじまりの海」はセカンド・ヴァースとコーラスで演奏時間3分58秒だったが、実際にテレビのオープニングで使われたのは、編集により作られたファースト・ヴァースとコーラスのみの短いバージョン(1分32秒)だった。 それは同年9月に発売されたサウンドトラック・アルバム「TVアニメーション たまゆら〜もあぐれっしぶ〜 ボーカルアルバム うたとせ」に「TV Size」として収められた。なおこのバージョンのミュージック・ビデオがあり、それはカセット・ウォークマン(懐かしい!)をつけて芝生を歩く坂本を横から映した映像になっていて、シングルおよびアルバムの初回限定版に付いていたDVDに入っている。それは現在YouTubeで観ることができる。

サウンドトラック・アルバム「TVアニメーション たまゆら〜もあぐれっしぶ〜 ボーカルアルバム うたとせ」の他の曲について。全11曲中歌入りは6曲。残りは音楽担当の中島ノブユキによるインストメンタルおよび声優・歌手の千菅春香(1992- )のスキャット入りの曲。これらが落ち着いた音楽でなかなか良いのだ。中島ノブユキ(1969- )は、ジェーン・バーキンのピアニスト、音楽監督を務めたのち、パリに拠点を移して作曲家として活躍している。ちなみに大貫さんとは、2010年に映画「人間失格」のサウンドトラックでコラボの実績がある。

歌入りの曲について(「第〇話」は当該曲がフィーチャーされた放送回)
2. はじまりの海 -TVサイズ- 坂本真綾 オープニングテーマ  
4. おかえりなさい〜acoustic ver.〜 坂本真綾 第8話
6. 神様のいたずら -うたとぴあの- [作詞作曲 大江千里 編曲 中島ノブユキ] 中島愛 第9話 中島愛(めぐみ 1989- )は茨城県出身の声優・歌手。
7. つつまれて [作詞 micco 作曲編曲 菊池達也] marble 第7話 marbleはmiccoと菊池達也からなる音楽ユニット。
9. ありがとう -TVサイズ- [作詞作曲 尾崎亜美 編曲 佐藤準] 中島愛 エンディングテーマ 1分43秒の短縮版で、4分53秒の完全版は2013年8月7日シングル盤で発売された。
10.最後の夏休み [作詞作曲 荒井由美 編曲 山本隆二] 千菅春香 第12話 1976年荒井由美がハイファイセットに提供した曲で、本人はアルバム「Olive」1979でセルフカバーしている。

なおアニメでフィーチャーされたが、本CDに収められなかった曲は以下のとおり。
・希望のカタチ [作詞 micco 作曲編曲 菊池達也] marble 第10話。 これはアニメ第1期第10話に使用された曲で、そのため第1期のサウンドトラック盤 「TVアニメーション 「たまゆら〜hitotose〜」 ボーカルアルバム、なので」2011年12月28日発売に収録されている。
・風色のフィルム [作詞作曲編曲 矢野博康] 中島愛 第11話。上述の中島のシングル「ありがとう」に収録。

「はじまりの海」は大貫さんの提供曲のなかでも1級にランクされる作品。そしてこの曲をきっかけに、素敵な音楽とアニメーションにめぐり逢うことができました。

[2025年9月作成]


Blue Vacation  ナミノート (2013)  Omagatoki  
 

3. 横顔 [作詞作曲 大貫妙子 編曲 小林治郎] 3曲目

Erika: Vocal, Chorus
小林治郎: Acoustic Bass, Acoustic Guitar, Cajon, Bongo, Triangle, Shaker, GlockenSpiel

2013年7月24日発売

3. Yokogao (The Profile) [Words & Music: Taeko Onuki, Arr: Jiro Kobayashi] 3rd track

 

ブラジル音楽やシティポップスを愛する小林治郎(埼玉県出身)は、1994年頃からプロとしての音楽活動を始め、比屋定篤子の音楽パートナーとして1997〜1999年にリリースされた彼女のアルバムの作曲(全曲)、編曲、演奏(ベース、ギター等)に関わった。代表作は「まわれまわれ」、「メビウス」(「Composer」の記事「なにもいらない」2009参照)。2001年彼女が沖縄に帰ることになったため、彼女とのユニットは解消となり、その後は他アーティストへの楽曲提供やセッション参加などの活動を行っていたが、新人ボーカリストのErikaと出会って、2010年からナミノートとして活動を開始した。

本作は2013年に発表した初アルバムで、全11曲中オリジナルは2曲、8曲がシティポップス、1曲がブラジル音楽のカバーという構成になっている。大貫さんの「横顔」は小林のギター、ベース、パーカッションの多重録音によるバックで、キーボードを使わないストリングス・バンドの透明感あるサウンド。ノンヴィブラートで飾り気のないErikaのボーカルとともに明るい感じの演奏になっている。

その他の曲について (編曲 小林治郎)
1. カナリア諸島にて [作詞 松本隆 作曲 大瀧詠一] 大瀧詠一 1981 アルバム「Long Vacation」収録、シングル「君は総天然色」のカップリング。
2. 常夏のIkema-池間- [作詞 渡邊シュウ 作曲 小林治郎] オリジナル。 「池間」は宮古諸島にある小さな島。沖縄出身の作詞家による日本のトロピカル・アイランドの歌。本作でカバーされた名曲群に劣らぬ眩しい光を放っている。
3. 横顔
4. 素直になりたい [作詞作曲 杉真理] ハイファイセット 1984 シチズンのCMに使われた曲。
5. 夏のクラクション[作詞 売野雅勇 作曲 筒美京平] 稲垣潤一 1983 富士フィルムのCMソング。
6. Don't Know Why [作詞作曲 Jesse Harris] Nora Jones 2002 全米1位。トラディショナルとジャズが融合したサウンドは当時とても新鮮だった。
7. Midnight Love Call [作詞 南佳孝、有川正沙子 作曲 南佳孝] 石川セリ 1977 南佳孝によるけだるい感じのボサノバ曲で名曲。彼は1980年にセルフカバーしている。
8. 曇り空 [作詞作曲 荒井由美] 荒井由美 1973。50年前に「ひこうき雲」を聴いた時の驚きと感動が蘇ってくる。
9. Batucada [作詞作曲 Paolo Sergio Valle, Marcos Valle] Marcos Valle 1968。 バトゥカーダはサンバのスタイルのひとつで、メロディーや歌のない打楽器のみの演奏をさす。ブラジルのシンガー・ソングライター、マルコス・ヴァリの名曲のひとつで、ダンスの喜びをポルトガル語で歌っている。
10. てぃーんずぶるーす [作詞 松本隆 作曲 原田真二] 原田真二 1977 懐かしいね!
11. 夕暮れの横顔 [作詞 Erika Yook 作曲 小林治郎] オリジナル シンプルな編成によるバンド・サウンドは、はっぴいえんどを彷彿させる。

その後Erikaは2児の母となり、二人はナミノートの活動を続けたが、2022年に小林は尾張文重と「えとらんぜ」という新しいユニットを結成し現在に至っている。

ブラジル音楽とシティポップスの美味しい取り合わせ。オリジナル曲が光っている。

[2025年8月作成]


  
星空の下の音楽会  Nagi (2013)  Konami   
 







5. ピーターラビットとわたし [作詞作曲 大貫妙子 編曲 滝口泰成] 5曲目

Nagi: Vocal
滝口泰成: All Instruments

写真上: アルバム(2013年12月4日発売)
写真中: Nagi (2014年2月11日 星空の下の音楽会 VOl.3 於 銀座TACT)
写真下: 「Twinkle Twinkle Little Star」by Super Simple Songs 2010

5. Peter Rabbit To Watashi (Peter Rabbit And Me) [Words & Music: Taeko Onuki, Arr: Yasunari Takiguchi] 5th track by Nagi from the album "Hoshizora No Shita No Ongakukai" (The Concert Under The Starry Sky) on December 4, 2013

 

2005年、東京郊外にあった小さな英会話スクールで、ある講師が既存の子ども向けの歌が教材として難しすぎると考え、よりシンプルで楽しめる音楽を作り始めた。オリジナルや既存曲のアレンジは大好評で、CD化され海外にも広まった。そして2006年先生向けに作った教材の使い方ビデオをYouTube(2005年創業で当時は認知度が低かった)に投稿したところ子供達にも受けたため、本格的に映像制作を作るようになった。現在は「Super Simple Songs」としてカナダのトロントに本拠地を構え、質の高い子ども向け映像・音源・書籍などを提供している。その会社が制作した「Twinkle Twinkle Little Star」は、星とフクロウのアニメーションに女の子が英語で歌う「キラキラ星」が流れるYouTube動画で、2010年リリースの後、15年で23億回という驚異的な視聴数に達している。

本アルバムは、2010年冬にプラネタリウムで行われた「星空の下の音楽会」というイベント(その時のボーカルは須藤まゆみ) に参加したミュージシャン、スタッフ達が、上述の曲を歌ったNagiという日本人の小学生(おそらく帰国子女)を招いて制作したもので、彼女が「とんがりボウシと魔法の365にち」というニンテンドーDSゲームのCMソングを歌っていた関係で、ゲーム制作会社のコナミから発売された。2枚組からなり、「そらぐみ」が日本語8曲と英語2曲を打ち込み主体で5人のクリエイターが編曲とサウンドメイキングを担当、「ほしぐみ」はローズ高野と町田文人のアコースティックな生演奏による英語カバー5曲という構成になっている。Nagiの英語はネイティブ・クラスだ。

5.「ピーターラビットとわたし」はボサノヴァ調のアレンジ。Nagiのボーカルは子供声なんだけど、小さい子にありがちな音程や歌い回しの不安定さがなく、安心して聴いていられる。その声には大人が子供を真似て歌うのとは全く異なるリアルさがあるね。編曲・演奏担当の滝口泰成は、コンセールパインという放送・配信番組で使用される著作権フリーの音楽を作る会社で作品を提供していた人。

その他の曲について
Disc 1 そらぐみ
1. Holy And Bright [作詞 山上路夫 奈良橋陽子 作曲 タケカワユキヒデ 編曲 松井亮] ゴダイゴ 1979。 テレビ番組「西遊記II」、「なりゆき街道旅」のテーマソング。
2. Shooting Star -願い星- [作詞 かの香織 作曲編曲 松井亮] オリジナル
3. イージュー★ライダー [作詞作曲 奥田民生 編曲 クノシンジ] 奥田民生 1996。「イージュー =E10」は30歳を意味していて、中年ライダーを歌った曲。小学生のNagiが歌うことで不思議な感じが出ている。
4. あたらしいワルツ [作詞作曲編曲 クノシンジ] オリジナル
5. ピーターラビットとわたし
6. うたの地図 [作詞作曲編曲 滝口泰成] オリジナル
7. だいすき [作詞作曲 岡村靖幸 編曲 塚崎陽平] 岡村靖幸 1988。本田「New Today」CM曲に使用。
Nagiのボーカルに会っていて、とてもいい感じ。
8. ナイショ [作詞作曲編曲 塚崎陽平] オリジナル
9. 最後の春休み [作詞作曲 荒井由美 編曲 ローズ高野] ハイファイセット 1976。荒井由美は1979にアルバム「Olive」でセルフカバー。 ローズ高野(本名 高野康弘)は及川光博のバックをやっていたときついた芸名で、「ローズ」は花ではなく、フェンダー・ローズ・ピアノのこと。
10. black star [作詞 iori 作曲編曲 ローズ高野] オリジナル

Disc 2 ほしぐみ
11. 見上げてごらん夜の星を [作詞 永六輔 Yutaka Tashiro 作曲 いずみたく 編曲 町田文人] 伊藤素道とリリオ・リズム・エアーズ、坂本九 1963。ここで歌われている英語詞は、アメリカで発売された「Come raise your eyes to the sky」で始まる歌詞とは異なる。ギターを弾く町田文人は坂井泉水のバンドZARDにいた人。
12. 夢で逢えたら [作詞 大瀧詠一 高野昌美 作曲 大瀧詠一 編曲 ローズ高野] 吉田美奈子 1976。英語で歌っているが、これもアン・ルイスが歌った英語詞とは異なっている。
13. Twinkle Twinkle Little Star [フランス民謡 編曲 ローズ高野] 新録音で、ローズ高野のピアノ伴奏のみで英語で歌っている。
14. Winter Song [作詞 吉田美和 Mike Pela 作曲 吉田美和 中村正人] Dream Come True 1994。ドリカムの「雪のクリスマス」の英語バージョン。
15. When You Wish Upon A Star [作詞 Ned Washington 作曲 Leigh Herlin 編曲 ローズ高野] ディズニー映画「Peter Pan」1953。ここではアコーディオン一本(奏者は佐藤芳明)によるワルツのアレンジ。

なおインターネットには、翌年の2月に行われたコンサートの記事・写真と動画、そして「見上げてごらん夜の星を」のミュージック・ビデオが残っている。

当時小学生だったNagiは現在20代の女性になっているが、彼女についてわかったのはファースト・ネームが「Takano」ということだけで、その後の彼女についての資料・情報は見つからなかった。なお「高野渚」という名前の女性は何人かいるけど、子供時代の経歴で繋がる人はいなかった。いま何処で何をしているんだろう?

歌の上手い小学生が歌う「ピーターラビットとわたし」。

[2025年9月作成]


2014年  東京オアシス(オリジナル・サウンドトラック (2011/10/12発売)、Tint (2015/6/10) の頃     
The IDOLM@STER CINDERELLA MASTER Cool Jewelries 002 (2014)日本コロムビア     


 

3. メトロポリタン美術館 [作詞作曲 大貫妙子] 3曲目


白坂小梅(声 桜崎千依): Vocal
滝澤俊輔(Trytonelabo): All Programming
越川歩: Violin

写真: 向かって左端の女の子が白坂小梅 (2014年12月17日発売)

1. Metropolitan Bijutsukan (Metropolitan Museum) [Words & Music: Taeko Onuki] 3rd track by Koume Shirasaka (Voice: Chiyo Ousaki) from the album "The IDOLM@STER CINDERELLA MASTER Cool Jewelries 002 on December 17, 2014
 

「アイドルマスター・シンデレラガールズ」は、「アイドルマスター」の世界観をもとに開発された携帯端末専用のソーシャル・ゲーム。アイドルのカードを集めて育成する内容(私はやった事がないので、イメージが湧かない)で、サービス期間は2011年〜2023年。派生商品としてテレビアニメ、Webアニメ、ラジオ、音楽ゲーム、CDなどが発売された。本作は「jewelries」というCDシリーズ第2弾3部作の2作目で、アイドルのなかから選ばれた5人が全員で歌うオリジナル2曲、リクエストにより選ばれた曲を各人がソロで歌う5曲の計7曲とボーナストラックのミニドラマからなっている。

3.「メトロポリタン美術館」はホラー好きで霊感が強いというキャラの白坂小梅が歌う。彼女の声は声優、女優、歌手の桜崎千依(おうさきちよ)が担当。打ち込み+バイオリンのバックと幼めの声優ヴォイス(あの当時はまだなかったけど、今聴くとAIの声のようにも聞こえる)によるカバーを楽しめる。編曲者の滝澤俊輔が属している「Trytonelabo」は、ゲームやテレビアニメの音楽制作を行うクリエイター集団。

他の曲について
1. オルゴールの小箱 [作詞 森由里子 作曲編曲 高橋浩平] 歌 全員。 オリジナル曲
2. 大都会交響楽 [作詞作曲 小西康陽 編曲 滝澤俊輔] 歌 川島瑞樹(声 東山奈央)。 ピチカート・ファイブ 1997
3. メトロポリタン美術館
4. 君の知らない物 [作詞作曲 ryo 編曲 中衛門"Berkenstein"憂] 歌 神谷奈緒 (声 松井恵理子)。supercell 2009
5. 蛍火 [作詞作曲 椎名豪 編曲 中衛門"Berkenstein"憂] 歌 北条加蓮 (声 渕上舞)。 須藤まゆみ 2005
6. 見上げてごらん夜の星を [作詞 永六輔 作曲 いずみたく 編曲 滝澤俊輔] 歌 アナスタシア (声 上坂すみれ)。伊藤素道とリリオ・リズム・エアーズ、坂本九 1963
7. ゴキゲンParty Night [作詞 森由里子 作曲 小野貴光 編曲 玉木千尋] 歌 全員。オリジナル曲

どれも打ち込みによる演奏で、アニメヴォイスの歌手と合わせて人工的な匂いがプンプンするけど、おもちゃのようなキラキラ・ワクワク感、可愛さがあるね。

[2025年9月作成]


2015年 Tint (2015/6/10) の頃   
都会/California Woman Cat Boys (2015)  Cony/Jet Set  


1. 都会 [作詞作曲 大貫妙子] シングルA面

高木壮太: Organ
Fukaishi Norio (No Rio): Bass
Uramoto Uminari (Ulapton): Drums

注: ベースとドラムスについては漢字名の情報がなかったので、アルファベットの表記にしました。

2015年10月30日発売

1. Tokai (City) [Words & Music: Taeko Onuki] Single A-Side by Cat Boys from the Single on October 30, 2015

私は1960年代、青山にあった父の社宅に住んでいたことがある。それは青山学院中等部の裏にあり、当時は原っぱや斜面の林などがある静かな所で、そこでセミやクワガタを採った思い出がある。それが1964年のオリンピック開催に伴う道路整備により、青山学院のキャンパスの下にトンネルを掘って、渋谷から六本木に抜ける道路(六本木通りと首都高速3号渋谷線)を整備したことで、家から渋谷までのアクセスが劇的に改善した。それを機会に街の雰囲気は一変、六本木通りは当初は静かなオフィスが立ち並んでいたが、お洒落な都会の街並みに変貌を遂げていった。

そのトンネルの手前の青山学園高等部と六本木通りの間のスペースに「青山蜂」というクラブがある。1960年代にその通りを歩いて渋谷に行っていた私には信じられないことだ。1995年にオープンし、多くのDJとアーティストを輩出した老舗で、風営法やコロナ禍で苦労したそうだが、今もがんばって営業している。Cat Boysはそこを本拠地とするオルガン、ベース、ドラムスからなる3人組のグループ。彼らが2015年に出したシングル盤レコードで大貫さんの「都会」をカバーしている。

Cat Boysは2013年に活動を開始し、キーボードの高木は音楽プロデューサー、映像作家、ライターとしてマルチな人。ドラム奏者はUlaptonという名前でDJもしていたが、現在はZutsuki Dという人に替わっているらしい。「都会」はオルガンをメインとしたインストルメンタルで、3人というミニマムなメンバーによるファンク・バンドとしてグルーヴ感一杯のプレーだ。B面の「Carifornia Woman」(作詞 Kathy Wakefield, Leonard Caston 作曲 Leonard Caston) はエディ・ケンドリックス1977年のカバー。

ラウンジ・ファンク・トリオによる「都会」のインストカバー。

[2025年8月作成]


2016年 Taeko Onuki meets Akira Senju Symphnc Concert (2016/12/21) の頃   
都会 (Re-Issue)  HF International (2016-2023)  Spiral Beats Productions, Urban Discos  









1. 都会 (Silent Poets Remix_Dub) [作詞作曲 大貫妙子] 2016 Single B面

Silent Poets(下田法晴): Remix

2. 都会 (City Lovers Rock Vocal Dub Edition) [作詞作曲 大貫妙子 編曲 HF International] 2020 Single A面

Shiho.C: Vocal
福田征希: Piano, Synthesizer, Programming
平岩克規: Programming
戸城孝啓: Guitar

3. 都会 (Nautilus Re-work) [作詞作曲 大貫妙子] 2023 Single B面

Shiho.C: Vocal
[Nautilus]
中林万里子: Keyboards
梅沢茂樹: Bass
佐々木俊之: Drums

写真上: シングル(2016年8月17日発売 B面 Silent Poets Remix_Dub)
写真中: シングル(2020年12月9日発売 A面 City Lovers Rock Vocal Dub Edition)
写真中: シングル(2023年9月20日発売 「都会」表紙)
写真下: シングル(2023年9月20日発売 B面 Nautilus Re-work)

1. Tokai (City) (Silent Poets Remix_Dub) [Words & Music: Taeko Onuki] Single B-Side by HF International from the single on August 16, 2016

2. Tokai (City) (City Lovers Rock Vocal Dub Edition) [Words & Music: Taeko Onuki, Arr: HF International] Single A-Side by HF International from the single on December 9, 2016

3. Tokai (City) (Nautilus Re-work) [Words & Music: Taeko Onuki] Single B-Side by HF International from the single on September 20, 2023



2013年に発売されたHF Internationalのシングル「都会」は、2006年、2020年、2023年に再発された。ここではそれらについてまとめて述べる(2006年の記事ですが、2020年および2023年の再発盤についてもまとめて書きます)。

2006年の再発盤はA面は「都会(City Lovers Rock Edition) feat. Shiho.C」というタイトルで、2013年のシングルA面と同じ録音が収められたが、B面の「都会(Silent Poets Remix Dub)」は新たに制作されたトラックになっていた。それは下田法晴(みちはる)のユニットSilent Poetsによるダブ・リミックスで、原曲断片のみを残して、あとは全く異なる内容になっていて、妖しげな世界を創り上げている。これだけ改変されてもHFの名前で発表しているのは、彼らがプロダクションに関わっているからだろう。

2020年の再発盤はA面「都会(City Lovers Rock Vocal Dub Edition) 」で、B面は「Give You My Love」という別の曲。2013年のダブがインストルメンタルだったのに対し、ここでは「歌のダブ」ということで、ボーカル入りのトラックにリバーブやディレイを深めにかけたエフェクト処理によって、スペーシーな感じに仕上がっている。

2023年はUrban Discosというレーベルから再発されたシングルで、A面は2006年盤と同じ「都会(City Lovers Rock Edition) feat. Shiho.C」になっているが、B面は新たに録音されたNautilusというバンドによるリウォーク・バージョンが入っている。これはShiho.Cのボーカルとコーラスのトラックに新たなバックを付けることで、全く別のバージョンに仕上げている。Nautilusはドラム奏者の佐々木俊之をリーダーとするトリオで、ジャミロクワイなどのようなグルーヴィーなアシッド・ジャズのバンドで、ボブ・ジェームスの曲から命名したそうだ。彼らのバックにより、当初のラヴァーズ・ロック・エディションとは全く異なるサウンドになっているのが面白い。クラブ・ミュージックの醍醐味であるグルーヴという点では同じだけどね。

10年にわたって展開された「都会」のバリエーションが楽しめる。


   



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